USCPAのお仕事

USCPA(米国公認会計士)で日本にいながらどこまで年収アップできるかリアルに考えてみる

2022年1月9日

受験生

年収を上げたいです。USCPAを取って年収を上げることできますか?どれくらいの年収が期待できますか?

りくぞう

年収上げたいというその気持ちよく分かります。USCPA(米国公認会計士)資格を取ってどれだけ年収を上げられるか、リアルなところを語ってみましょう。

私は米国の会計業界に8年以上います。

日本での勤務経験もあります。

今回のエントリでは「日本にいながら」年収を上げる方法、どれ位の年収が期待できるか、を考えてみたいと思います。

USCPAなので当然アメリカで働くという方法も有り得ますが、米国就労ビザの発行が厳しい今はかなり難易度が高いと言わざる得ません。

そのため今回は日本で働くという前提で考察してみたいと思います。

この記事を読み終えたら

USCPA資格を取得することで果たして年収が上がるのか、どうやれば年収を上げることができるのか、が分かるようになっています。

年収を上げるのは結局時間(経験)

早速ですが、USCPA資格を取得して年収を上げるとは、つまり転職して将来の期待年収を上げる、ということです。

日本の会社に勤めている方の場合、あなたがその会社に居続ける限りUSCPAを取得してもすぐに年収が上がりません。

日系企業の場合年収アップの要因は年次と昇進だけでしょう(経理等の管理部門の場合)。

昇進には年次が大きく影響するので、結局年収アップのコツとは同じ会社に長くいる、ということが基本なのです。

日本にいる限りは下記の図の期待年収を想定するしかありません。

途中でUSCPA取得した場合の現在勤務する会社での将来の期待年収曲線
USCPA取得した上で現在勤務する会社での期待年収曲線

縦軸が年収、横軸が時間です。

時間が立てば経験と年次が増えます。

先に述べた通り役職は多分に経験や年次の影響を受けますので、横軸を役職と考えても良いです。

つまり年収を上げるには結局時間を費やすしかないのです。

年収を増やす基本的な要因は、経験≒年次≒役職

さて、同じ会社に勤めていることを前提にして、上図の点線の時点でUSCPAを取得したとします。

しかし、期待年収の傾きに変化はありません。

USCPAを取ろうが取るまいが将来の年収の推移は変わりません。

なぜならUSCPA資格取得だけでは実務経験を有している証明にはならないからです。

会社が従業員に仕事を実際に担務させる場面において「USCPAを持っているから」だけでは当然十分ではありません。

今までやってきたから、経験があるから、という事実が必要です。

つまり同じ会社で雇用され続ける限り年収アップは結局時間が過ぎるのを待つしかない(もちろん経験を積んだうえで)。

ちなみに、ここでは経理や海外子会社管理などのバックオフィス(管理部門)での雇用を想定しています。
営業であれば話は違います。
歩合制であれば役職に関係なく報酬が上がるので、この図のような右肩上がりの直線にはなりません。

監査法人や税理士法人もこの図の通りになります。

会計業界のBIG4は全て外資系ですがこの図の通り年次(役職)が上がらない限り年収は増えません。

ただ日系ドメスティックな事業会社と比べ横軸の進み方が早いです(1000万円プレーヤーの道に早く到達する)。

外資系であるBIG4であっても年収を増やす基本的な要因は、経験≒年次≒役職
※ただし年収1000万円は割と早く実現する。

USCPA取って年収上げる=転職する

USCPAを取って年収アップとはどういうことかというと、期待年収を変えるということです。

イメージとしては下記の図のようになります。

USCPAを取得し、転職した場合の期待年収曲線
USCPAを取得し、転職した場合の期待年収曲線

期待年収の傾きを変えるためには転職するしかありません。

USCPA取って年収上げる=転職すること

経理や税務、財務という職種が管理部門(バックオフィス)である以上年収は経験(役職)に依存します。

USCPAそれ自体で経験を担保することにはならないので、結局転職して期待年収の傾きを上にジャンプさせるしか道は無いのです。

同じ会社内でも、例えば現在は派遣社員やパートタイムで雇用されており、USCPAを取得することで正社員登用される→結果期待年収の傾きが急になる、というシナリオは十分有り得ます。これは非常に筋が良いと思います。

「USCPA取って年収上げる」をリアルに考えてみる

結局転職するしかない、という身も蓋もない事実を直視したうえで、ではどんな転職先があるか。

Indeedで「米国公認会計士」で検索してみます。

2021年10月現在、454件のヒット。そもそもこれって多いのでしょうか?

米国公認会計士での求人検索結果

「公認会計士」で検索すると7,158件のヒット。

日本の公認会計士と比べるとそりゃ需要=求人マーケットは小さいですよね…。

さて、「米国公認会計士」で一番最初に出てくる案件はBIG4のひとつデロイト(税理士法人トーマツ)です。

米国公認会計士での求人検索結果詳細

年収650~750万円、月給83~100万円、年収400~1200万円と威勢の良い数字が並びます。

しかしここで注意しなければいけないのは、これは当然経験値があった上での金額ということです。

「米国法人税務サービス(シニアアソシエイト)」650~750万円は恐らく税理法人トーマツの案件で間違いないでしょう(アンテロープは人材紹介会社名)。

650~750万円の提示ですが、「シニア」ポジションです。

このポジションは新卒からBIG4に入社して4年目で到達することが通常です。

事業会社の経理からいきなり650万円のポジションに就くことはできず、新卒と同じポジションである「アソシエイト」からのスタート、つまり450~500万円程度からになるはずです。

よっぽどのことがあれば「エキスペリエンスド(経験者)アソシエイト」といって新卒2~3年目くらいの認識で採用されることもあるかもしれません。

400~1200万円と広いレンジで募集している場合、当然1200万のポジションは経験値が求められます。

この「不正調査アドバイザリースタッフ」は監査法人のポジションのようです。

監査法人で1200万円取れるのはシニアマネージャーレベルです。

監査法人のシニアマネージャーとは、その業種で10年選手ということ。

結局長い時間(10年)かけて経験を積んだ人が1000万円プレーヤーになるという身も蓋もないリアルがここにあります。

ちなみに400万円はアソシエイトでしょう。

つまり未経験者はここからスタート。

ここから分かることは、もしあなたが今務める会社にあと10年在籍したら1000万円プレイヤーになれる場合、USCPA取得は年収アップの観点からいえばあまり意味がないということです。

上場勤務の方は当てはまるかもしれません。

もしあなたが今の会社にあと10年勤めてもこの年収を到達できない場合、USCPA取得→転職という戦略で期待年収を上げることができます。

ただ強調したいのは、会計というバックオフィス業務である以上高年収(1000万円プレイヤー)に到達するには相応の年数が必要ということです。

・「USCPA取得後最初の10年で1000万円プレイヤー入り」が期待できるベストシナリオ(又はセカンドベスト)

・上場企業勤務の人は「10年以内1000万円」はすでに射程圏内なのでUSCPA取ったところで年収アップには寄与しない

・現在の勤務先で年収1000万円への道筋はまったく見えない、または20年以上勤めてやっと見えてくる、といった場合USCPAで年収アップは期待できる

USCPAで狙える期待年収が高い職種

Indeedのこの1ページ目は結構多くを語っています。

ここからUSCPAで年収アップを狙えるポジションが分かります。

米国公認会計士での求人検索結果詳細

USCPAをきっかけに高年収(1000万円超え)が射程圏内になるのは、下記でしょう。

・BIG4税理士法人
・外資系経理(多分ディレクター、CFOレベル)
・BIG4監査法人

税理士法人トーマツはシニアポジションで650~750万円ということでした。

この上の役職であるマネージャー職で少し年次を重ねて1000万円プレイヤー入り、という流れでしょう。

また経理ポジション月給83~100万円ということですが、米国本社とのやり取りと記載あります。

つまり外資系事業会社です。

経理というバックオフィスなので月給100万円=年俸1200万円は恐らくCFO(バックオフィスの一番偉い人)またはディレクター(経理で一番偉い人)という上席ポジションと思われます。

いずれの役職も事前にしっかりした組織、それこそ監査法人レベル、で10~15年の経験は必要と思われます。

不正調査アドバイザリースタッフ400~1200万円のポジションですが、第三者委員会等調査支援と記載あるのでクライアントは上場企業なのでしょう。

となると中小の監査法人・税理士事務所ではなくBIG4ポジションなのだと思います。

現職経理の人向けに私が思う狙い目ポジション|BIG4のアウトソーシング部門

さて現在経理部門にいてUSCPAを考えている、USCPAで年収を上げたいと思っている方に向けにひと言だけ。

経理からBIG4の監査や税務部門へ転職する場合、期待年収は上がるかもしれませんが、転職1年目から数年は年収ダウンを余儀なくされるかもしれません。

そりゃそうですよね、監査業務なんて監査法人に在籍しないと経験することは絶対ないし、税務申告業務もしかり。

しかし今のBIG4は会計アウトソーシング部門を抱えています。

2021年10月4日現在のリンクですが、下記のように全4社とも会計アウトソーシング部門があるようです。

https://www.ey.com/ja_jp/tax/outsourcing-services

https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/operations/topics/outsourcing.html

https://home.kpmg/jp/ja/home/services/tax/outsourcing/accounting.html

https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/outsourcing.html

恐らく監査法人、税理士法人、コンサルと同程度の期待年収にはならないかもしれませんが、ある程度は高いと思われます。

なにより転職時の収入ダウンが無いと思われます。

ちなみに会計アウトソーシングだと日本の会計基準で記帳すると思われるので、ますますUSCPAの実務とは離れていきそうです。

現在管理部門にいる人向けに私が思う狙い目ポジション|海外子会社管理

米国会計業務からどんどん離れていくのですが、現在管理部門にいる人がUSCPAを取るとどういったキャリアパスが有り得るか考えてみたいと思います。

狙い目は海外子会社管理のポジションだと思います。

海外子会社管理は人事、経理、税務、総務、経営企画等と多岐に渡ります。

USCPAは経理と税務に関わってきます。

USCPA資格取得のタイミングでこうした海外子会社管理のポジションに転職するのも有りだと思います。

コロナが落ち着いてくれば現地赴任の可能性も高いので、海外子会社管理ポジションの供給も増えてくるのではないでしょうか。

終わりに

予備校や巷で言われる「USCPAで年収アップ!」の妥当性を考えてみました。

・ 結局BIG4に転職できるかどうか、外資系企業のバックオフィスの上席ポジションに転職できるかどうか、がカギ

・ リアルに考えると、上限は1500万円くらい、しかも同一フィールドで15年以上
※ BIG4の監査法人や税理士法人でパートナーになってがんばるということであれば上限無し

・ 文中でも触れていますが、BIG4のマネージャー職で1000万円プレイヤー入り

・ マネージャーへの昇進が最速で7年目

・ そこから1~2年して1000万円プレイヤー入りが現実的

・ つまり、BIG4に10年で1000万円

現在上場企業に勤めている方にとっては、「なんだ、USCPA取ってもその後はあんまり旨味ないやん」となるかもしれません。

一方、そうでない方の場合、例えば地方の中小企業勤務であれば30年奉公して役員になっても1000万円に届かないというケースも十分あり得るかと思います。

その場合USCPA取得→転職することで将来の年収アップが現実味を帯びてきます。

私のようにUSCPA取得前からすでに会計事務所に勤務しているケースにおいて、USCPAを取得する理由はマネージャー昇進の要件を満たすためが第一です。

マネージャー昇進→年収アップ、という道を確保するほかには、プライドを保つためだったり自己研鑽だったりという理由も大きいです。

会計事務所に勤務していない場合は、BIG4や中堅監査法人・税理士法人へのキャリアパスの一歩目としてUSCPAは非常に取り組みやすいです。

USCPA取得後も事業会社に勤めるというキャリアの場合でも英語×会計というスキルセットを獲得する、そうしたスキルセットを獲得することで自信が得られる、という理由からUSCPA受験にチャレンジするのは素晴らしいことだと思います。

特に後者(自信が得られる)について、私の感じたことですが、「自分よくがんばったな」という感覚?感慨?は何物にも代えがたいです。

受験生

英語×会計というスキルセットは、ぼーっとしていては一生身に着かないですからね。

りくぞう

そうですね。すでに上場企業や高年収が見込まれる会社に勤務している場合でもUSCPAへのチャレンジは意義深いと思います。

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