この記事で解決できる悩み
- USCPA試験ってどれくらい難しいの?
- 日商簿記や公認会計士の試験とくらべて簡単?
- 英語が苦手な人には難しい試験?
USCPA(米国公認会計士)試験ってどれくらい難しいのですか?
気になるところですよね。この記事ではいくつかの観点からUSCPA試験の難易度を解説してきます。
本記事の信頼性
- USCPA(米国公認会計士)試験に6回不合格、10年挑戦して全科目合格を達成
- BIG4のPwC勤務を経て、現在中堅USCPAファームのアドバイザリー
- 日米の会計業界で10年
本記事を読み終えると、次のことがわかります。
- USCPA試験は自分にとってハードルが高すぎるのか
- USCPA試験にチャレンジする価値があるのか
- もし挑戦する場合はどのくらい自分の時間・お金・精神力を費やすと合格できるのか
- 他の資格を目指すべきなのか
目次
USCPA試験の難しさを受験者データから考える
まずはUSCPA試験の合格率を確認します。
全世界と日本のデータを見てみましょう。
USCPA試験の合格率
USCPA試験の合格率はよく50%といわれますよね
USCPA試験の合格率の取り扱いはすこし注意が必要
2022年の全世界の受験生を対象とした各科目の個別の合格率は次のようになっています。
全世界の各科目の単体の合格率
科目 | 2022年の合格率 |
AUD | 48.2% |
BEC | 59.7% |
FAR | 44.9% |
REG | 61.1% |
平均すると1科目あたりの合格率は53%以上?USCPA試験って簡単なんですか?
後述する日本の公認会計士試験や簿記の合格率と比べるとずっと高いですよね。
ただ、日本人だけのデータで見たり、全科目合格率で見るとすこし印象が変わります。
日本人の合格率
つづいて日本人のデータを見てみます。
今回参照する国別データは2015年度とやや古いです。
あくまで参考としましょう。
比較しやすいように同年の全世界のデータを括弧内に表記しました。
各科目の個別の合格率
科目 | 2015年の日本人合格率(全世界) |
AUD | 33.5%(51.5%) |
BEC | 43.5%(65.5%) |
FAR | 45.4%(52.5%) |
REG | 50.7%(54.6%) |
日本人だけのデータを見ても、やはり科目単体での合格率は高いですね
日本人はAUDが苦手なようですが、他の3科目では平均すると45%以上の合格率
それでは次に全科目合格をする割合を見てみましょう。
全科目合格の割合を見るためには、「X年以内に合格したか」というもう一つの指標も考慮します。
1年以内に全科目合格した割合
日本(全世界) | |
(1)2015年に開始した人の数 | 846人(42,439人) |
(2)上記のうち2015年に全科目合格した人の数 | 56人(6,925人) |
1年以内合格率 | 6.6%(16.3%) |
科目個別で見るのではなく、1年以内に4科目全てに合格した割合で見てみると…
日本人では7%以下、全体では16%
1年以内の全科目合格はかなり難しいことが伺えます
2年以内に全科目合格した割合
日本(全世界) | |
(1)2014年に開始した人の数 | 783人(41,066人) |
(2)上記のうち2015年までに全科目合格した人の数 | 159人(11,750人) |
2年以内合格率 | 20.3%(28.6%) |
2年以内に全科目を合格する割合は日本人で20%、全体で見れば29%
1年以内に比べれば、2年以内の全科目合格はずっと現実的になってきます
各科目の単体での合格率は50%を超えていましたが、全科目の合格率でみると印象が違います。
- 日本人の合格率
- 各科目の単体の合格率は45%以上だが、2年以内に全科目合格する割合は20%
USCPA試験全科目合格に必要な勉強時間
つづいて全科目合格に必要な勉強時間を見てみましょう。
- 全科目合格に必要な勉強時間は、一般的には1,200~1,500時間
- わたしは2,000時間、1年9カ月費やした
2,000時間費やしたわたしの体験談はこの記事に詳細を書いています。
2年で1,500時間を消化する場合、1日あたり4時間が目安となります。
休日にもっと多く時間を取れる場合は、社会人でも1年半で合格することも十分可能でしょう。
USCPA試験の勉強は選ぶ教材によって勉強効率がおおきく変わってしまいますよね
勉強時間を短くしたいなら、洋書はぜったいに選ぶな、というわたしの自論も参考にしてもらえると幸いです。
あわせて読みたい
日本の公認会計士試験や日商簿記検定との比較
つづいては日本の公認会計士試験や簿記検定と比較してUSCPA試験の難易度を探ってみましょう。
合格率、勉強時間、受験日、受験資格で比べてみます
合格率
勉強時間 | |
USCPA試験 | 20% |
日本の公認会計士試験 | 10% |
簿記検定1級 | 10% |
簿記検定2級 | 20~30% |
前述の通りUSCPA試験の全科目合格の割合は約20%。
日本の公認会計士試験の全科目合格(短答式、論文式)の割合はおおむね10%。
日商簿記検定1級の合格率は10%、2級は、ペーパー式と近年導入されたコンピュータ式とで差がありますが、おおむね20~30%。
合格率で見ると、日本の公認会計士試験や日商簿記1級の方が難しそう…
合格率だけで見れば、USCPAは日本の公認会計士試験や簿記1級の2倍
勉強時間
日本の公認会計士試験の勉強時間は一般的には3,000時間と言われます。
1日4~5時間の勉強を2~3年かける必要あり。
勉強時間で見ると、日本の公認会計士試験の難しさが分かりますね
USCPA試験全科目合格にかかる時間の2倍じゃ全然足りない、くらいに思った方が良さそう
受験日
受験日 | |
USCPA試験 | いつでも |
日本の公認会計士試験 | 年2回(短答式) 年1回(論文式) |
簿記検定1級 | 年3回 |
簿記検定2級 | 年3回(ペーパー式) いつでも(コンピュータ式) |
USCPA試験の特徴は基本的にはいつでも受験できるところ。
一方、日本の公認会計士試験は簿記1級は受験日が決まっています。しかも1年に2~3回しかチャンスがない。
日本の公認会計士試験の論文式については1年に1回しか開催されません。
365日いつでも受験できるのと、1年に1回しか受験できないのとでは、難易度は全く違いますよね
いつでも受験可能というUSCPA試験の仕様は圧倒的にありがたいです
受験資格
日本の公認会計士試験や簿記検定は誰でも受験できます。
一方、USCPA試験は大学である程度の単位を取得していないと受験申込ができません。
USCPA試験は州よって受験要件が異なりますよね
最もゆるいアラスカ州では、会計15単位取得済みであれば受験申込み可
USCPA試験の受験資格は厳しいですが、予備校の通常コースではこの受験資格を満たすクラスをオンラインで履修できます。
なので、USCPA試験の受験資格についてはぶっちゃけビビる必要なしです
以上のようにUSCPA試験の難易度を、日本の公認会計士試験や日商簿記と比較することで見てきました。
どこをどう切り取っても日本の公認会計士試験の難しさにはかなわない。
簿記2級よりは難しいけど、簿記1級と比べたら、もしかしたらUSCPA試験のほうが簡単かもしれない。
そんなUSCPAだけど、日本の公認会計士試験に合格した人たちと同等の給与テーブルに載れる、というのがUSCPAキャリアの最大のうまみ
USCPAのキャリアについてはこの記事も参考にしてください
英語が苦手な人にとってUSCPA試験は難しいのか
USCPA試験が難しい最大の理由は英語だからです。
しかし当ブログの見解としては、英語のUSCPA試験、恐れるにたらず、です。
USCPA試験と受験者の英語力についてはいくつか記事を書きました。
なぜUSCPA試験の英語にビビる必要がないか。
TOEIC換算で500点程度、大学受験英語程度の英語力があれば対応できるからです。
アビタス、TAC、プロアクティブ、大原などの大手予備校では日本語のオリジナルテキストや日本語訳を載せたテキストを作成していますので、勉強のインプットは日本語で可能です。
つまり、日本人のUSCPA受験生はすでに大学に入学している人がほとんど
USCPA試験に必要な英語力をすでに持っているということですね
USCPA予備校の公式見解
USCPA試験に必要な英語力について予備校の見解を参考にしてみましょう。
アビタス
USCPAの専門校であるアビタスのオリジナルテキストを使用すればTOEIC400~500点レベルからの合格可能です。
TAC
本科生コースで使用するTACテキストには分かりやすい日本語解説及び章ごとに英日対訳専門用語リストが付いており、英語力に不安がある方でも無理なく学習を進めることができます。
TOEIC400~500点から合格可能、英語力に不安があってもOK、という見解ですね
予備校なのでポジショントークの部分はあると思います。
とはいえ、実際に全科目合格した身からしてもこれらの見解に違和感はありません
インプットは日本語で可能
さて、ここで重要なことを言います。
USCPA試験は日本語テキストで勉強すべき。
英語の試験、恐れるにたらずと前述しましたが、それは日本語でインプットできるからです。
日本語の優秀な教材のおかげで、大学受験英語で全科目合格を狙うことができる。
すべて英語で作成された本場アメリカの教材を”洋書”と言ったりしますが、英語力が無い受験生はいくら費用が7割掛けになったとしても洋書はやめてください
BECのライティング問題
USCPA試験のBECという科目では英作文問題があります。
英語でビジネスライティングは負担が大きいのですが…
結論、BECの英作文はビビる必要なし
なぜなら、BECのライティングセクション(Written Communication:WC)の配点は15%です。
極論すれば、WCはゼロ点でも科目合格可能。
実際に日本人がどれくらいWCで得点しているか見てみましょう。
日本人のライティングセクションの正答率
ライティングセクション得点率 | |
Overall(※) | 13.4% |
2015 | 18.2% |
2014 | 13.3% |
2013 | 6.9% |
Other(※) | 9.1% |
※資料から類推するに2006~2015がOverallの指す期間と思われる。つまりOtherは2006~2012を指すと思われる。
年によっては7%以下?ほとんど正答できていないんですね…
データ元が2015年と古いのであくまで参考ですが、日本人はWCでほとんど得点できていないと思って良いかと
USCPAの試験概要
さて、ここでUSCPAの試験概要をざっくり見てみましょう。
なお、ここでは従来のUSCPA試験概要です。
2024年からの新試験形式についてはこちらの記事で解説しています。
受験科目数
全部で4つの試験に合格しなければいけません。
- Financial Accounting and Reporting (FAR)
- Regulation (REG)
- Business Environment and Concepts (BEC)
- Auditing and Attestation (AUD)
日本の公認会計士試験の科目数に比べかなり少ない印象です。
FARがいわゆる会計論です。
日本の簿記論や財務会計論はこのFARが該当します。
REGは税法と商法、AUDは監査論です。
BECは経済学や経営論、ビジネス全般から出題されます。
試験時間
各科目の試験時間は4時間です。(ただ試験時間は改定があるので都度要確認)
1科目4時間というのは、大学受験やTOEICなどの試験と比べると多いかもしれません。
日本の公認会計士試験の場合、短答式で丸一日費やしたり、論文式でも一日に4時間程度かかるようなので、それと比べるとマイルドです。
試験日程
新型コロナをきっかけに今では毎月予約できるようになりました。
日本の公認会計士試験だと1年のうち1~2回だけ。
フレキシブルな試験スケジュールはアメリカの資格試験ではよくあります。
米国税理士試験やTOEFLも自分の好きな日を予約できます。
この点はUSCPA試験合格を目指す上でかなりポジティブな要素。
ポイント
USCPA試験は1年のうち何度も受験できる。
有効期限
科目合格をしたら1年半以内に残り全ての科目に合格しなければ、最初の科目合格は失効します。
例えば最初にFARに合格したのが2021年1月1日だとします。
すると、残りの3科目を2022年6月30日までに全て合格しないとFARの合格は無効になってしまいます。
日本の公認会計士試験も科目合格に有効期限があります。
日本の公認会計士試験もUSCPA試験も、受験生は最初の科目を合格すればその時点から時計の針が回り始めるわけです。
ポイント
科目合格の有効期限は1年半
受験要件
受験資格が厳しいのがUSCPAの特徴です。
誰でも試験を受けることはできません。
ただアラスカ州は受験生に良心的で、会計系のクラスを15単位履修していたら受験申込みが可能です。
アラスカ州以外では、おおむね次ような受験要件が定められます。
- 大学で120~150単位を履修済みでなければいけない
- 150単位のうち会計系科目(コア科目)を30単位近く履修済みでなければいけない
上記に加え、例えばカリフォルニア州では倫理の単位を9単位履修済みでなければいけない、など州ごとに受験要件は微妙に異なります。
日本の大学の単位も特別な審査をパスすれば認められます。
ポイント
大学の授業120~150単位、うち会計系授業を30単位近く必要な州がほとんど。
アラスカ州が一番ゆるく、会計系15単位だけで受験可。
以下、USCPA試験の概要のまとめです。
- USCPA試験は全4科目
- 1科目4時間の試験
- 1年のうち何度も受験できる
- 科目合格の有効期限は1年半
- 受験資格が厳しく、大学の授業150単位、うち会計科目が30単位程度必要な州が多い
すごく主観的にUSCPA試験の難易度を表現してみる。無理やり偏差値換算してみる。
上記では合格率、学習時間といった指標からUSCPA試験の難易度を考察してきました。
ここではものすごく主観的に表現してます。
主観すぎて参考にならん、ということも十分考えられますがお付き合いいただければと思います。
USCPA難易度 主観1
- FAR:むずい、量多い、USCPAとはFARである
- BEC:むずくない、量多くない
- AUD:むずい、量多くない、抽象的なコンセプトをちゃんと理解するのサボっちゃダメ
- REG:むずい、量多い、USCPAとはFARである
伝わりますでしょうか。ざっくりすぎてすみません。
要は、FARとREGがタイヘン、と言いたいのです。
さて、もうひとつ主観的な難易度をご紹介します。
USCPA難易度 主観2
- 日本の大学MARCHの人気学部を、無勉強から浪人1年だけで合格する感覚
- 早慶上智のトップティアほど難しくはない
- つまり、がんばれば結構イケる感覚。でも無勉強から1年でってのものミソ。
- つまり、がんばれないと結構イケない感覚。
上の主観2をすこし言い換えてみます。
USCPA難易度 主観3
MARCH<早慶底辺学部<USCPA試験<早慶難関学部<公認会計士試験(日本)
ニュアンスが伝わると幸いです…
私が18歳のころMARCH、早慶上智を受験しました。
当時の体感と擦り合わせると、USCPA試験はMARCHの中堅学部よりは確実に難しい。
MARCHの人気学部には早慶底辺学部よりも難しいケースもあるため、たぶんこの辺りか、もう少し難しいかな、という感覚です。
1年で早慶トップティア学部に合格するほどの難易度ではないし、ましてや日本の公認会計士試験ほどでは全くない、という感覚。
終わりに
USCPA(米国公認会計士)試験の難易度をあの手この手で表現してみました。
全科目合格率や受験日(1年間に何回受けられるか)を考えると、USCPA試験はかなり受験生に寄り添った試験です。
一方、受験資格が少し厳しかったり、英語での試験という点で懸念する人もいるかもしれません。
さらに私の主観的な指標もお伝えしました。
みんなで楽しくUSCPA受験を乗り切りましょう。
なまけ者の私でさえ突破できたのだから、あなたでも絶対に全科目合格できます。