この記事で解決できる悩み
- USCPA資格(ライセンス)を取得すべきかどうか
- ライセンス取得のメリット・デメリット
- 具体的なライセンス取得の進め方
USCPA試験に全科目合格しました。ライセンスも取得した方が良いでしょうか?
全科目合格おめでとうございます!よくがんばりました。USCPAライセンスって取得した方が良いのか悩みますよね。一緒に考えてみましょう。
米国で働く場合はライセンス取得はマストですが、日本で働く場合はどうでしょう?
日本ではUSCPAライセンスがあったとしても独占業務は行えません。
本記事ではラインセスは取得した方が良いのか、取得によるメリットとデメリットを見ながら解説していきます。
ライセンス取得の具体的なやり方も解説しています。
本記事の結論
- 会計事務所や経理職で転職を考えているなら日本にいてもライセンス取得によるメリットは大きい
- 営業など会計に直接関わらない職種の場合はデメリットに注意して判断すべし
本記事の信頼性
- 「USCPA受験の疑問に答えるブログ」管理人
- USCPA(米国公認会計士)試験に6回不合格、10年挑戦して全科目合格を達成
- BIG4のPwC勤務を経て、現在中堅USCPAファームのアドバイザリー
- 日米の会計業界で10年
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目次
USCPAライセンス取得のメリットとデメリット
ライセンス取得にデメリット?取れるもんは取っておけば良いのでは?
これがそうでも無いんです。お金と時間が結構かかるというおはなしです
USCPAライセンスとは
USCPA試験に全科目合格するだけでは「USCPA(米国公認会計士)」ではありません。
USCPAと名乗ったり、名刺に書いたり、会社のウェブサイトに肩書を載せるためにはUSCPA資格(ライセンス)を受け取っている必要があります。
具体的なライセンス取得方法は後述しますが、大きく「ライセンス申請→授与」と「継続教育の維持」をすることでUSCPAと名乗ることができます。
USCPAライセンスの取得・維持の方法は各州の公認会計士協会が規定しますが、どの州でもおおむねやり方は同じです。
さて、米国ではライセンスを持つことで監査書に署名ができるという独占業務が存在します。
一方、USCPAライセンスのおかげで日本で独占業務にありつける、ということはありません。
では日本で働き続けるかぎりライセンスを取得する必要はあるのでしょうか?
ライセンス取得によるメリットとデメリットを考えてみましょう。
ライセンス取得のメリットとデメリット
ライセンス取得のメリット、デメリットはあなたの業種や職種により異なります。
メリットは大きくわけて3つ。
- 昇進に有利(必須のケースも)
- 転職に有利
- 自信になる
デメリットは、
- ライセンス申請に時間とお金($250~500)がかかる
- 継続教育に時間とお金(年間$150~)がかかる
継続教育(Continuing Professional Education: CPE)については後述します。
このメリット・デメリットを次の3つの勤務先の業種・職種でわけてみます。
- 会計事務所(監査法人や税理士法人)
- 経理、経営企画、海外子会社管理などのミドル・バックオフィス系
- 上記以外(例えば営業など事業会社でのフロント職)
すると下記のようなマトリックスができます。
勤務先の業種、職種 | メリット | デメリット |
会計事務所 | ・昇進に有利(必須) ・転職に有利 ・自信になる | ・申請の時間とお金 ・継続教育の時間 (継続教育のお金は会社負担が多い) |
経理、経営企画、 海外子会社管理 | ・転職に有利 ・自信になる | ・申請の時間とお金 ・継続教育の時間 ・継続教育のお金 (会社負担もありえる?) |
その他 例:営業 | ・自信になる (名刺に書ける?) | ・申請の時間とお金 ・継続教育の時間 ・継続教育のお金 |
USCPAライセンスがあると昇進に有利なのか?
会計事務所に勤めている場合USCPAライセンスは昇進に有利になるケースが多いです。
とくに米国系の監査法人の場合はUSCPAライセンスがマネージャー職以上に昇進するために必須です。
米国系の税理士法人でもUSCPAライセンス、EAライセンス(米国税理士)、米国弁護士のいずれかの資格がマネージャー以上の昇進に必須です。
日系の監査法人の場合、下記のケースが当てはまればUSCPAライセンスが昇進に良い影響。
- 米国会計基準に関する案件を専門にとりあつかうパートナーがいる
- 米国会計基準に関する案件に特化した部署がある
上記の環境は米国系の監査法人とほぼ一緒なので、マネージャー以上の昇進に必須または有利に働くはずです。
こうした上記の業種・職種では、
USCPAライセンス>超えられない壁>USCPA全科目合格
という認識です。
さて、経理職はどうでしょう?
米国現地法人の単体会計や連結決算を担当するのであれば、昇進には良いシグナルを与えると思います。
米国現地法人を担当していない場合は、昇進という観点ではたいした影響力はもたないと思います。
経営企画や海外子会社管理の部署では、「USCPAライセンス」と「USCPA全科目合格」の違いはあまり理解されていないでしょう。
営業などのフロント職であればなおさら昇進のタイミングに両者の違いを問われることはない。
ライセンスがあると転職市場で映(ば)える
転職を考えている場合はライセンス取得まで進んだ方が良いケースが多いです。
ライセンス申請は手間だし、継続教育というコストがかかります。
しかし手間とコストがかかるからこそ、会計業界にコミットするというシグナルを発することができる。
私は現在勤める事務所で採用にも携わることがあります。
採用側の立場で考えてみると、USCPA試験合格者とUSCPAライセンス取得者が並んでいる場合、やはりライセンス取得者がより目を引きます。
会計業界の転職市場では下記のようなイメージとなります。
USCPA資格者>USCPA試験全科目合格>超えられない壁>USCPA試験科目合格>USCPA試験勉強中
さて、転職市場ではシグナリングが全て。
どれだけ良い人材と思わせることができるかどうか、です。
実際に仕事ができるできないは面接の段階では推測するしかありません。
職務経歴書もあくまで面接官に自分の能力をほのめかすことしかできません。
その点USCPAライセンスはとても分かりやすい指標になります。
「USCPAです」と言いきれることは、採用側により強いシグナルを発することができます。
そうした意味で経理、経営企画、海外子会社管理などのミドル・バックオフィス系を狙う場合も同様の考え方からUSCPAライセンス取得をおすすめします。
会計と全く関係のない事業会社のフロント職ということであればさすがに「USCPAライセンス」vs「USCPA全科目合格」が採用の重要ポイントになることは考えづらいです。ただ「USCPAです」と言いきれることで、ある一定のハロー効果はどの業種・職種でも生まれるでしょう。
ハロー効果:
ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象(Wikipedia)。
例えば、ある分野の専門家が専門外のことについても権威があると感じてしまうこと。
ハロー効果をうまく使う、という観点では営業職でもUSCPAライセンス取得の意義は大きいかも。なぜなら名刺に書けるから。
USCPAライセンスがあると自信がもてるのか?
はい、ライセンスを取ると自信がもてます。
もちろん4科目合格を達成したことで得られる自己肯定感や成功体験は一生モノ。
しかし、それと同じくらい私にとってライセンス取得は価値がありました。
わたしの感覚的・主観的な話なので言葉で説明するのは難しいですが、「USCPA試験に全科目合格しました、まだライセンス取ってません」と言いつづける自分と、「USCPA試験に全科目合格しました、USCPAです」と言いきれる自分。
会計業界に身を置く人間として、どちらが自己肯定感を得られるかは明らかです。
ライセンス取得と維持にはお金と時間ばかりかかるのか?
はい、ある程度のお金と時間はかかってしまいます。
CPA試験4科目合格後、ライセンス取得までに必要な費用の目安は以下のとおり。
ワシントン州 | グアム州 | |
ライセンス申請費用 | $300~350(一回) | $200~250(一回) |
倫理試験費用 | $270(一回) | 試験なし |
他州で合格したCPA試験の移行手続き費用 | $25(一回) | 明記なし |
CPE(継続教育)費用 | $150~500(毎年) | $150~500(毎年) |
後ほど具体例を見ていきますが、ライセンス取得の要件をそろえるのはめんどうです。
州によっては追加で大学の単位を取得する必要があります。
多くの州で倫理(Ethics)試験の合格がライセンス要件になっています。
推薦状(※)の手配も必要です。
※第三者があなたのことを州の公認会計士協会対して「コイツは変なやつじゃないですよ、おたくの州の公認会計士としてふさわしいですよ」と推薦する手紙
一日二日で終わる作業ではないですし、数万~十数万円かかります。
また、申請時ほど消耗はしませんが、ライセンス維持のための継続教育にもお金と時間がかかります
しかしUSCPAのこうした時間とお金のハードルはすべて「参入障壁」と私は考えます。
たいへんだからこそ価値がある、乗りこえた者だけが得られるうま味がある、と考えます。
ライセンス取得おすすめの州|グアム
ライセンス取得のメリットとデメリットについて考えてきました。
ここからは具体的なライセンス申請の流れを紹介します。
さて、どの州でライセンス申請をすべきか?
考えるポイントは下記。
- どれだけ実務経験が必要か
- 倫理試験に合格する必要があるか
倫理試験はそれ程難しい試験ではありません。
なので、あまり気にしなくても良い、という考え方もあるでしょう。
ただある程度の試験の準備、受験申請を考えると手間であることは間違いないです。
たとえばCA州の倫理試験は、ほとんどの人にとって試験準備から受験終了まで数時間~10時間くらいの所要時間
また、実務経験についてはおおむね1,500~2,000時間または1~1.5年が必要、というのが相場です。
上記の観点から検討するとグアムのInactive(インアクティブ)が最もゆるいでしょう。
グアム(Inactive)のライセンス申請条件
- 実務経験が必要ない
- 倫理試験がない
まずグアムは倫理試験が必要無いです。
また、Inactiveであれば実務経験無しでライセンス申請ができます。
ん?Inactive?
はい、グアムにはActiveとInactiveの2種類のライセンスが存在します。
Inactiveのライセンスの場合「私はUSCPAです。」と名乗ってはいけません。
「私はUSCPA(Inactive)です。」と名乗らなければいけません。
グアムのUSCPAの肩書
実務経験が無い場合は、名刺の表記は、
- 「USCPA(Inactive)」と書かなければいけない
- 「USCPA」と書いてはいけない
なんのこっちゃ、という感じですが、要は資格「だけ」欲しい人のための資格、です。
グアムのInactive以外は、ほとんどの州でライセンス申請資格に大きな違いはないように見受けられます。
ちなみにニューヨークは、次のような条件となります。
- 学歴要件:会計コア単位33、ビジネス系の単位36、総取得単位150
- 実務経験:USCPAの上司のもとで1年以上の実務経験
ニューヨークは学歴要件がやや厳しいかもしれません。
会計コア単位とビジネス系の単位が他の州よりも多く10~20単位多く必要とされています。
具体的なライセンスの取得の仕方(グアム Inactive)|実務経験、大学単位、推薦状等
ではグアムのInactiveのライセンスの取得方法を見ていきましょう。
まず申請書。
ライセンス申請書(License Application Formとかそういう名前がついている)は州の公認会計士協会(Board of Accountancy)のウェブサイトで入手します。
「PERSONAL IDENTIFICATION INFORMATION」には社会保障番号を記入しますが、持っていない場合はパスポート番号で良いです。
4ページ目の「Moral Character Reference」では、あなたのことを知っている第三者の推薦人(Endorsee)が申請書に反映されている情報が正しいことを宣誓する必要があります。
この推薦人は自身の名前、あなたのことを何年知っているか、あなたとの関係、などを記載しなければいけません。
関係は友達(Friend)でも良いようです。
また、この推薦人は英語の政府発行の身分証(パスポート等)のコピーを提出する必要があります。
さらに推薦人の雇用主の情報も記載する必要あり。
友達が無職(Unemployed)だったらどうなるのでしょうか…。多分無職でも大丈夫な気がします。
このMoral Character Referenceは3人から入手しなければいけません。
上記を含めたグアムの公認会計士協会に送付する資料の一覧がこちら。
・$225の小切手またはマネーオーダー
・直近1年以内に撮影したパスポートサイズの写真
・英語の政府発行の身分証のコピー
・「Moral Character Reference」3枚(3名分)
・「Experience Affidavid」はInactiveの場合不要
もし試験をグアム以外で受けていた場合、およびグアム以外の州で既にラインセンスを取得している場合は以下の資料も提出します。
- Authorization for Interstate Exchange of Examination and Licensure Information(こちらから入手できます)
- 大学の成績証明書(米国以外の大学の場合Foreign Academic Credential Evaluationも)
ちなみにActiveライセンスを取得する場合は「Experience Affidavit」を通して実務経験を報告します。
ライセンス取得後の継続教育(CPE)
さて、ライセンス取得後にひとつの問題が生じます。
それが継続教育(Continuing Professional Education: CPE)です。
CPEとは、継続的に通信講座や講演に参加して知識の維持向上を意図する制度です。
このCPE(継続教育)をサボるとUSCPAライセンスが停止したり失効したりします。
CPE(継続教育)の要件は各州独自です。
例えば2年で80単位、そのうち4単位は倫理から取得しなければいけない、とか。
3年で120単位、ただし1年に最低20単位取得しなければいけない、とか。
CPE(継続教育)を満たす講座はUSの民間の業者がオンラインでたくさん用意しています。
たとえばMasterCPE。
グアムのCPE要件をグアム公式サイトでは見つけられませんでしたが、MasterCPEでは次のように書いてありました。
- 3年間に120時間
- 1年で最低20時間
- 120時間のうち倫理を6時間
- 120時間のうち最低30時間は会計と監査
- 人事やコミュニケーション科目もCPE(継続教育)に含めることが可能だが最大で30時間まで
まとめ
- 会計事務所に勤めている場合USCPAライセンスは昇進に有利
- 米国現地法人の単体会計や連結決算を担当するのであれば、昇進には良いシグナル
- 転職市場で少しでも目立つにはライセンス取得を
- 「USCPAです」と言いきれることは、採用側により強いシグナル
- USCPAライセンスを取ると自己肯定感があがる
- ライセンス取得には受験とは異なる条件をクリアしなければいけない。取得単位が150以上であったり、会計コア科目の取得単位が多く必要だったり。
- ライセンス申請には実務経験を必要とする州がほとんどだけど、グアムだけは例外。グアムの「Inactive」というライセンスは会計関連の実務経験ゼロで取得できる。
- ライセンスを取得した後はCPE(継続教育)を受けなければいけないことに注意
- CPE(継続教育)は2年間で80時間とか3年間で120時間とか、結構負担に感じる人もいる